久山町研究
[最終更新日:2012年10月18日]
地域紹介
■人口
福岡県糟屋郡久山町 8,289名(2012年4月1日現在)

■年齢構成
平均年齢44.0歳(平成24年)

■地域の特徴
久山町(ひさやままち、37.43km2)は、福岡市に隣接する町であり、周りは山で囲まれている。1956年9月30日に久原村と山田村が合併し、この2村の頭文字を町名とした久山町が発足した。胸高直径83cm、樹高 26.20mの欅(けやき)や、推定樹齢250年、枝張り180平方メートルの大藤、オグラコウホネ・ヒメコウホネ(スイレン科コウホネ属の珍しい水生植物)が自生し、この地が緑が豊かな土地である事を物語っている。

・久山町ホームページ
http://www.town.hisayama.fukuoka.jp/
コホート概要
久山町研究室のある久山町ヘルスC&Cセンター
久山町研究室のある久山町ヘルスC&Cセンター

■歴史
久山町研究では、1961 年、1974年、1988年、2002年の循環器健診を受けた40歳以上の住民からそれぞれ第1集団(1,618名)、第2集団(2,038名)、第3集団(2,673名)、第4集団(3,124名)を創設し、ほぼ同じ調査法と診断基準で追跡している前向きコホートである。研究開始当初は脳卒中の実態とその危険因子の解明が研究の中心だったが、現在は虚血性心疾患、悪性腫瘍、認知症、糖尿病、高血圧、遺伝子などの検討も行っている。

■調査項目
身長、体重、腹囲、腰囲、体組成、骨密度、随時血圧、家庭血圧、心電図、Augmentation Index、頸部血管エコー、血液検査、75g経口糖負荷試験(空腹時、負荷後30分および120分)、尿検査、既往歴、生活歴、家族歴、服薬調査、栄養調査、身体活動度調査、うつ病調査、認知症調査、内科診察、眼科診察(眼圧、眼底など)、歯科診察

■主な成果(いずれもPubmedへリンク)
・Arima H, Tanizaki Y, Kiyohara Y, Tsuchihashi T, Kato I, Kubo M, Tanaka K, Ohkubo K, Nakamura H, Abe I, Fujishima M, Iida M. Validity of the JNC VI recommendations for the management of hypertension in a general population of Japanese elderly: the Hisayama Study. Arch Intern Med. 2003 ;163:361-6.

・Ninomiya T, Kiyohara Y, Kubo M, Tanizaki Y, Doi Y, Okubo K, Wakugawa Y, Hata J, Oishi Y, Shikata K, Yonemoto K, Hirakata H, Iida M. Chronic kidney disease and cardiovascular disease in a general Japanese population: the Hisayama Study. Kidney Int. 2005 ;68:228-36.

・Kubo M, Kiyohara Y, Ninomiya T, Tanizaki, Y, Yonemoto K, Doi Y, Hata J, Oishi Y, Shikata K, Iida M. Decreasing incidence of lacunar vs other types of cerebral infarction in a Japanese population. Neurology. 2006 ;66:1539-44.

・Ninomiya T, Kubo M, Doi Y, Yonemoto K, Tanizaki Y, Tsuruya K, Sueishi K, Tsuneyoshi M, Iida M, Kiyohara Y. Prehypertension increases the risk for renal arteriosclerosis in autopsies: the Hisayama Study. J Am Soc Nephrol. 2007 ;18:2135-42.

・Ninomiya T, Kubo M, Doi Y, Yonemoto K, Tanizaki Y, Rahman M, Arima H, Tsuryuya K, Iida M, Kiyohara Y. Impact of metabolic syndrome on the development of cardiovascular disease in a general Japanese population: the Hisayama study. Stroke. 2007 ;38:2063-9.

・Kubo M, Hata J, Ninomiya T, Matsuda K, Yonemoto K, Nakano T, Matsushita T, Yamazaki K, Ohnishi Y, Saito S, Kitazono T, Ibayashi S, Sueishi K, Iida M, Nakamura Y, Kiyohara Y. A nonsynonymous SNP in PRKCH (protein kinase Cη) increases the risk of cerebral infarction. Nat Genet. 2007 ;39:212-7.

・Doi Y, Kubo M, Ninomiya T, Yonemoto K, Iwase M, Arima H, Hata J, Tanizaki Y, Iida M, Kiyohara Y. Impact of Kir6.2 E23K polymorphism on the development of type 2 diabetes in a general Japanese population: The Hisayama Study. Diabetes. 2007 ;56:2829-33.

■研究の特徴
健診風景
健診風景
 当教室では、1961年から、福岡市に隣接した糟屋郡久山町(人口約8,400人)の住民を対象に脳卒中、心血管疾患などの疫学調査を行っている。久山町住民は全国平均とほぼ同じ年齢・職業分布を持っており、偏りのほとんどない平均的な日本人集団である。研究の発端は、日本の死亡統計の信憑性に疑問が投げかけられたことにある。当時、脳卒中はわが国の死因の第1位を占めていた。なかでも、脳出血による死亡率が脳梗塞の12.4倍と欧米に比べて著しく高く、欧米の研究者からは「誤診ではないか」との声が上がった。しかし、それを検証するための科学的なデータがなかった。そこで日本人の脳卒中の実態解明を目的として始まったのが久山町研究だった。

 1961年から追跡を開始した第1集団(剖検率80%)の初期のデータでは、脳出血による死亡率は脳梗塞のわずか1.1倍。死亡診断書に病型診断の誤りが数多く含まれていたであろうことを、剖検という科学的な手法で証明した。

 久山町研究の最大の特徴は、この剖検率の高さにある。正確な死因を知るという点において、剖検以上に正確な診断方法はない。追跡調査の精度も高い。これまでに行方不明となった対象者は数例に過ぎず、追跡率は99%以上。また、久山町研究では40歳以上の住民を5年ごとに集団に新しく加えているため、生活習慣の移り変わりの影響や、危険因子の変遷をもうかがい知ることができる。

 最近では、環境医学分野の教室員のほか、九州大学病態機能内科学、眼科、精神科神経科、心療内科、呼吸器科、予防歯科、健康科学センターなどから大学院生や研究者が集まり、研究テーマが生活習慣病全体に広がった。久山町研究は、臨床と疫学の両方を俯瞰できる幅広い視野を持つ人材を育てるユニークな疫学研究である。2002年に、従来の環境因子に遺伝子解析(SNPs)を加えた生活習慣病のゲノム疫学がわが国で初めて開始され、成果をあげている。
・九州大学大学院 医学研究院 環境医学分野ホームページ
 http://www.envmed.med.kyushu-u.ac.jp
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