研究成果
3.論文解説
日本人における脳卒中と心筋梗塞のリスクと4つの血圧指標
本論文を執筆した三浦克之先生(滋賀医大)よりコメント ・・・
循環器疾患発症の将来予測において「脈圧」が重要かどうかの議論がなされてきました。大規模なJALSのデータで確認したところ、脳卒中、心筋梗塞とも、また、男女、中年、高齢者のいずれにおいても、概して「収縮期血圧」が最も重要な指標でした。「脈圧」を重視した健康管理はすべきでないでしょう。
はじめに
血圧は循環器疾患の発症を予測する重要な指標です。血圧は、通常 「収縮期血圧」「拡張期血圧」が用いられますが、「脈圧」 「平均血圧」の指標の有用性を評価した諸外国からの報告があります。しかし、アジアやわが国の集団において、循環器疾患の発症の予測に対し、これら4つの指標のうちいずれの指標が有用であるかはまだ明らかではありません。

本研究では、JALSの0次統合研究データを用いて、脳卒中(脳梗塞・脳出血)・心筋梗塞のリスクについて4つの血圧指標の予測能を比較しました。
  • 収縮期血圧・・・血液を心臓から送り出すため、心臓が収縮する時の圧力です。「上の血圧」「最高血圧」と言われる事もあります。一般に年齢とともに上昇します。

  • 拡張期血圧・・・血液を心臓に溜めている時の、血管壁の圧力です。 「下の血圧」「最低血圧」と言われる事もあります。年齢とともに上昇しますが、大動脈の動脈硬化により、50〜60代から少しずつ低下します。

  • 脈圧・・・心臓の拍動によって生じる血圧の変化であり、「収縮期血圧−拡張期血圧」(収縮期血圧と拡張期血圧の差)で表されます。脈圧の上昇は大動脈の動脈硬化を示すと言われています。

  • 平均血圧・・・体の組織の細い血管の血圧であり、近似的には
     1 収縮期血圧+ 2 拡張期血圧」で表されます。
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  • 方法
    本研究では、年齢が40歳以上90歳未満の人を対象とし、血中コレステロール値や喫煙などの背景情報が得られている16の集団(コホート)48,909人のデータを用いました。4つの血圧指標の評価については、各指標1標準偏差上昇あたりの相対リスクの大きさで評価しました。
    結果
    脳卒中、心筋梗塞の発症に対しては、収縮期血圧と平均血圧が最も強い予測因子でした。ただし、男性の出血性脳卒中の発症に対しては、拡張期血圧が最も強い予測因子となりました。いずれの検討でも、脈圧は他の血圧指標よりも強い予測因子にはならないようでした。

    おわりに
    本研究の結果から、収縮期血圧と平均血圧が将来の脳卒中・心筋梗塞発症リスクを最も強く予測すると考えられました。日常の健康管理の場では主に収縮期血圧を用いてリスク評価をすべきでしょう。

    平均血圧については、現時点では使われる事が少ない指標ですが、収縮期血圧に加えて重要な指標となる可能性が示されました。
    Katsuyuki Miura, Hideaki Nakagawa, Yasuo Ohashi, Akiko Harada, Masataka Taguri, Toshio Kushiro, Atsuhiko Takahashi, Masanori Nishinaga, Hirofumi Soejima, Hirotsugu Ueshima, for the Japan Arteriosclerosis Longitudinal Study (JALS) Group. Four blood pressure indexes and the risk of stroke and myocardial infarction in Japanese men and women: a meta-analysis of 16 cohort studies. Circulation. 2009 ;119:1892-8. (PUBMED)