研究成果
3.論文解説
一般住民における脳卒中リスクと降圧剤治療
本論文を執筆した浅山敬先生(東北大学大学院)よりコメント ・・・
本研究を通じて、一般住民で服薬者のリスクを評価することの難しさを実感しました。しかし、本結果は血圧以外のリスクの総合的な管理の重要性を改めて裏付けるもので、実地診療にも役に立つことと自負しております。他の国々・研究チームの結果や、血圧情報・降圧薬の違いによる結果の差異など、今後の興味は尽きません。JALS 0次研究の成果をこのような形で報告させていただく機会を得て、筆頭著者として関係の方々に深く感謝しております。
はじめに
高血圧患者は、薬物療法により持続的な降圧が得られていても、同一血圧レベルの未服薬者に比べると予後が悪いことが知られています。

本研究では、 JALSの0次統合研究のデータを用いて、一般住民における降圧剤治療の有無と脳卒中のリスクを検討しました。
方法
本研究の対象は、降圧剤治療や脳卒中発症の有無などの情報が得られている4地域の40歳以上の住民11,371人です。

血圧の評価には、日本高血圧学会の高血圧治療ガイドライン(JSH2004)の区分を用いました。
収縮期血圧   拡張期血圧 分類
<120 かつ <80 至適血圧
120-129 または 80-84 正常血圧
130-139 または 85-89 正常高値血圧
140-159 または 90-99 軽症高血圧
160-179 または 100-109 中等症高血圧
>=180 または >=110 重症高血圧
注)収縮期血圧と拡張期血圧が異なる区分に入る場合、高い方とする
結果
未治療群では血圧区分が上がるにつれてリスクが高く、至適血圧と比較した場合、正常血圧の人であっても既に脳卒中のリスクが高い事が明らかになりました。

一方、治療を受けている群では血圧区分の上昇とリスクの上昇には一定の関係がなく、治療群において降圧コントロールがなされている対象であっても、未治療群の軽症高血圧に該当する人以上のリスクとなっていました。

おわりに
本研究の結果から、降圧薬治療を受けて至適、正常血圧の人であっても、未治療の同水準の人に比べると脳卒中のリスクがなお高い事がわかりました。ただし、本研究の結果を解釈する際には、治療により脳卒中のリスクが上がるのではなく、血圧が高い期間の影響や高血圧以外の要因などにより、リスクが下がり切れなかったと考えなければなりません。降圧薬治療の重要性・有効性は他の多くの研究から明らかですが、ひとたび高血圧となりますと、服薬により血圧をさげても、健康な時の水準まできれいに戻らないということは気に留めておきましょう。高血圧になる前の、日々の生活習慣に気をつけていくことが大事であることをこの研究は示しています。
Kei Asayama, Takayoshi Ohkubo, Seitaro Yoshida, Kazuo Suzuki, Hirohito Metoki, Akiko Harada, Yoshitaka Murakami, Yasuo Ohashi, Hirotsugu Ueshima, Yutaka Imai; and the Japan Arteriosclerosis Longitudinal Study (JALS) group. Stroke risk and antihypertensive drug treatment in the general population: the Japan arteriosclerosis longitudinal study. J Hypertens. 2009 ;27:357-64. (PUBMED)