研究成果
抄録
人口動態調査の調査票情報を用いた大規模コホート研究における死因照合作業の問題点の検討
原田亜紀子, 岡山明, 喜多義邦, 大橋靖雄, 上島弘嗣, 安村誠司, 日本動脈硬化縦断研究(JALS)グループ.
目的
循環器疾患の発症と死亡をエンドポイントとした疫学研究である Japan Arteriosclerosis Longitudinal Study( JALS )参加者を対象として,新統計法のもとで人口動態調査の二次利用申請から死因の照合作業までを実際に行い,人口動態調査を疫学研究で活用する際の課題を検討した。
方法
人口動態調査の二次利用の申請を行い,性,生年月日,死亡年月日,死亡時の居住市町村名を照合変数とし, JALSで登録された死亡者( 3,220 件)のデータと照合することで原死因を確定した。さらに,実際の照合作業に加え,照合に用いる性別,生年月日,死亡年月日,死亡時市町村コードの4変数を選択的に操作した際の照合状況への影響も検討した。
結果
初回照合の結果,原死因が特定できたのは 3,135件(97.4%)であった。照合不能であった 85件については, JALSの各コホート研究者に対して照合変数に該当する情報の確認を依頼し,修正した結果,最終的な照合者は 3,203件(99.5%)であった(第2回照合)。計2回の照合から,初回照合で照合不能であった 85件について,どのような情報の誤りにより照合できなかったか, JALS側,人口動態調査側で考えられる原因を整理したところ, JALS側の要因としては,「死亡日として調査日を誤記入」が 16件,「1〜2日の日付の違い」が 14件と多かった。一方,人口動態側の要因としては,「文字(日付)入力の誤り」が7件,「生年月日,死亡日ともに同じ日が入力」が4件と多くみられた。さらに,照合変数を選択的に操作し照合状況への影響も検討したところ,性別,生年月日,死亡年月日,死亡時市町村コードの4変数を用いた場合では,生年月日,死亡年月日いずれかが日付まで正確に得られていれば,照合候補者の重複を低率に抑えられた(死亡年月日が「月日」まで正確な場合は重複率が 0.2%,生年月日が「月日」まで正確な場合は, 0.2%)。
結論
人口動態調査を用い,死亡者の原死因を確定する作業を通じ,照合を困難にする原因は,申請者側のみならず人口動態調査側にもあることが明らかになった。また,照合に用いる変数を選択的に操作し照合状況を検討したところ,生年月日,死亡年月日のいずれかの情報が,月日まで正確に得られていることが重要であった。

キーワード: コホート研究,人口動態調査,統計法,死因照合

原田亜紀子, 岡山明, 喜多義邦, 大橋靖雄, 上島弘嗣, 安村誠司, 日本動脈硬化縦断研究(JALS)グループ.人口動態調査の調査票情報を用いた大規模コホート研究における死因照合作業の問題点の検討.厚生の指標.2012;59:1-8